美濃の人々

職人の技。美濃和紙製のあかりを町に灯す「らんたんや」さん

2023.10.13

profile

加納 英香

実家は美濃市で唯一の美濃和紙を使ったちょうちん屋さん。祖父の道具一式を受け継ぎ2005年に「らんたんや」を創業。うだつの上がる町並みで開催される「美濃あかりアート展」にて大賞受賞。

清流長良川が流れる美濃市で作られる「美濃和紙」は福井県の越前和紙、高知県の土佐和紙と並び「日本三大和紙」のひとつに数えらています。そんな高品質の和紙を使った和照明・ちょうちん作家で「らんたんや」を営む加納さんにお話を聞かせていただきました。

代々受け継いだ提灯づくり

美濃市で唯一のちょうちん屋を営むお家に生まれた加納さんは和紙やちょうちん作りの道具に囲まれ、祖父母やご両親がちょうちんを作る様子を見て育ったそうです。そんな加納さんは大の美濃和紙マニア。紙を触ると大体どの職人さんが漉いた紙かわかってしまうそうです。大学を出てからは美濃和紙の里会館で手漉き和紙体験の指導員になりました。

あるときふと「ちょうちん作りをやろうかな」と父にもらすと祖父が残した道具一式を譲り受け、今の「らんたんや」の開業につながったそうです。らんたんやさんは機械漉きの和紙から職人の手漉き和紙まで多様な和紙を使い分け、ベーシックな形から動物を模した商品までラインナップされているので見ていてとても楽しい気分になります。皆さんも是非一度立ち寄ってみては?

暮らし続けてわかる美濃の良さ

伝統を受け継ぐご実家に生まれてから美濃にずっと暮らしてきた加納さん。美濃に暮らして四季を過ごすことで分かる季節ごとの良さがあると言います。「春は桜の匂いに乗って、祭りのお囃子が聞こえてきたり。逆に冬は静かな町並みがキリッとした空気に包まれるのがいい」

そんな加納さんが特に好きなのは夕方の時間だそう。「実はうだつの上がる町並みは風水に基づいて設計されていて、南北45度傾いているんです。冬至の頃は町並みのちょうど真ん中に夕日が沈むところが綺麗でついつい何枚も同じような写真を撮ってしまうんです」という加納さんの言葉からは美濃への愛が溢れていました。

これからの美濃への想い

生まれてから町並みに暮らす加納さんですが、移住者についてはどう感じているのでしょうか。地元の方目線でお話をお伺いしました。

「移住者の方にはどんどん商売をやって欲しいですね。あとどうせお店を出すなら実際にそこに住みながら。祭りの準備や近所付き合いなどディープな関係になることもありますがそれを上回る楽しさがあると思います」と加納さん。美濃のうだつの上がる町並みは完全な観光地ではなく、町並みに住まわれている住民の方が実際にそこで生活しています。

加納さんは「町が盛り上がるのは嬉しいと思う反面、完全に観光地となってしまうことは寂しい」とおっしゃっていました。旅行が好きで世界や日本の様々な観光地を旅してきた加納さんはある観光地でがっかりした経験があるそう。「風情ある建物に惹かれて中に入ってみたんです。店内は現代的な作りで有名なブランドのお店が入っていました。歴史的な建造物の外見だけでなく、これまでの暮らしや使われ方まで考えた思いやりのある使い方をして欲しいなあ」と思ったそうです。

美濃市も暮らしと観光が入り混じった魅力的な土地です。美濃に新たな風を吹き込んでくれる移住者と伝統を受け継ぐ地元の方々。その両方がバランスよく混じり合うことで美濃市らしく盛り上がっていくのではないでしょうか。

information

らんたんや

営業時間

10:00~17:00

定休日

水・木

TEL

0575-35-1409

この記事を書いた人

藤原 拓海

2023年2月から美濃市の地域おこし協力隊としてNPO美濃のすまいづくりに所属。空き家コンシェルジュとして美濃市の空き家問題解決に向けて活動しています。

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